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戸隠池めぐり(長野県)

2019年9月19日(月)参考日8月29日(木)


photo2緑一色のみどりが池
緑一色のみどりが池 8.29

あっという間に8月が過ぎていった。高原に、裏山に、そして近所の公園をそぞろ歩き、花に出会う。今年は異常に暑かったけれど、草花は元気に花開いている。

標高の高い高原に咲く花に会いたくて、用がある夫を残して一人で戸隠高原に出かけたのは8月も終わる頃。これまでなかなか出会えなかった花に初めて会うことができた。レンゲショウマ。薄紫の大型の花は、ハスの花が下向きに咲いているようでなるほど蓮華、誰が名付けたか、感心する。雨模様の日に見たので花に雫が宿り、風情ある姿だった。

photo1レンゲショウマ
レンゲショウマ 8.29

随神門に行ってみようと植物園の外周を歩いたらツリフネソウ、キツリフネが、どこまでも広がって咲いていた。こんなにたくさん一斉に咲いているのを初めて見た。

高原は秋めく 8.29

photoシキンカラマツ
シキンカラマツ

photoサラシナショウマ
サラシナショウマ

photoオオシラヒゲソウ
オオシラヒゲソウ

photoレイジンソウ
レイジンソウ

随神門から奥社入り口のバス停に向かって歩く参道脇にはオオシラヒゲソウが純白の花を散らしている。疏水の淵に白い縁取りをしたようだ。日本海側の山地に咲く花だそうだ。細かい造形が見事で、見る花見る花写真を撮りたくなってしまう。そう思って一つ一つのぞいて歩くと、この花の蜜は美味しいのか、どの花にも小さな昆虫が止まっている。時には一つの花に何匹もの昆虫が頭を寄せ合っている姿も見られる。仲良くねと、声をかけたくなってしまう。

photo3アケボノシュスラン
アケボノシュスラン 8.29

森の中を歩いていると大木に隠れるように咲いているのはアケボノシュスラン、咲く場所によっては紅が濃いものもあるらしいが、私が見つけたのは白に近い花色でうっすらとピンクがかっていた。その名の通りのアケボノソウもこの季節に咲き始める。ただ、このアケボノソウの花色は暁の空の色ではない。どうしてこの名だろう?図鑑によれば、花の濃緑色の斑点を夜明けの星空に見立てたのだそうだ・・・なんとなく納得しにくい。というのも、小さな花の小さな斑点を大空に対比するというのがねぇ、でもこれは、私自身の小ささを表す感想かもしれない。

photo4アケボノソウ
アケボノソウ 8.29

photo6森は実りの季節に,クルマバツクバネソウ,ツバメオモト,トチバニンジン,ルイヨウショウマ
森は実りの季節に 8.29

photo7戸隠土産は五穀大福
戸隠土産は五穀大福 8.29

photo8ツクバトリカブト
ツクバトリカブト 8.29


「暑い、暑い」とぼやいていた日々は短く、長野は秋が近い。再びバスで戸隠高原に向かったのは9月も半ば過ぎ。高原の花を見たい時は我が家から一番近くてバス路線もある戸隠が便利だ。中社から山に入り、小鳥が池から鏡池へつながる道はいつか歩いてみたいと思いながらなかなか行くことができなかった。平日ならバスも空いているだろうと、ようやく出かけることができた。

photo9コスモスとオオマツヨイグサ
コスモスとオオマツヨイグサ 9.19

中社でバスを降り、山道に入っていくが、道を間違えたらしくちょっと藪漕ぎをしてしまった。コスモスが風に揺れ、その姿に見惚れながら歩いていたからかもしれない。脇にはオオマツヨイグサ、身近で見られるのはめっきり減って、メマツヨイグサばかりが多くなった。緑の草原に大輪の明るい黄色が月のように輝いているのを見つけて嬉しくなった。

photo10レイジンソウ白花
レイジンソウ白花 9.19

涼しい風が感じられるようになってくると、高原には紫の花が増えてくる。アザミたちもそうだが・・・、森の中に大きく伸びて小さな花火のような花を散らしているシキンカラマツや、気取った冠の形のレイジンソウもうっすらと紫だ。戸隠の森にはレイジンソウが多いが、今年は白い花も見つけた。

トリカブトの仲間も綺麗な紫の花だ。トリカブトの仲間はいくつかあって見分けにくく、同定が難しい。秋の山の代表的な花だが、猛毒なので触るのは怖い。

秋に出会う花 9.19

photoオトコエシ
オトコエシ

photoノブキ
ノブキ

photoワレモコウ
ワレモコウ

photoヒュウガセンキュウ
ヒュウガセンキュウ

紫というよりは赤に近い花も草原を彩る。ワレモコウは暗紅色というか、地味だけれど心惹かれる花だ。私たちはただ花を美しいと愛でるだけではなく、人の想いの歴史もそこに見て取ることがあるからかもしれない。花の名をつけるときに花が自ら『私も紅ですよ』と言ったとか。その心意気、見習いたいくらいだ。

photo11一人だけの小鳥が池
一人だけの小鳥が池 9.19

小鳥が池を過ぎ、鏡池に到着。一人で優雅に蕎麦ガレットをいただいてから随神門に向かう。帰りは奥社のバス停からバスに乗ろう。

photo13一面のユウガギクと鏡池
一面のユウガギクと鏡池 9.19

photo14ナツハゼのガレット
森の恵みナツハゼのガレット 9.19

photo16マント植物の代表クズ
マント植物の代表クズ 9.19

帰り道、バスの中から眺める森はマント植物で覆われているところが多い。その繁殖力ゆえに嫌われることが多いけれど、クズの根には多量のデンプンが含まれ、葛粉がとれる。私が尊敬していたコンサベーショニストの柴田敏隆先生(※)は、クズの花はグレープフルーツの香りがすると観察会に集まった子どもたちに話し、一緒に匂いを嗅いでいた。柴田先生が鬼籍に入られてから数年が経つ。懐かしい思い出だ。

そう言えば、ママコノシリヌグイというすごい名前の花も、ヘクソカズラという嫌われ者の花も、そして恐ろしいトリカブトも、柴田先生は面白おかしく解説しながら紹介していた。笑いながら話を聞いた子どもたちは、その花のことをきっと忘れないだろう。

photo15名前のわからないキノコがいっぱい
名前のわからないキノコがいっぱい




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