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春の移ろい地附山 733m(長野県)

2025年4月18日(金)


photo1ダンコウバイ:地附山
ダンコウバイ 3.28

3月の終わり頃からしばしば地附山に登って春の気配を探した。春分の頃は一気に暖かくなったのに、その後寒気が訪れて降雪もあった。風の強い日が多く、今年の花は軒並み開花が遅れているという。

家から2、3時間あれば一回りしてくることができる地附山に何回か足を運んでいるうちに街にはソメイヨシノが花開き、桜祭りなどの催しが賑やかだ。そして気がつけば地附山登山口の駒弓神社参道の桜も一面に開いている。桜の花を見ると春がきたなぁと思うのはやはり日本人の感覚なのだろうか。

photo2ミヤマウグイスカグラと虫:地附山
ミヤマウグイスカグラと虫 3.28

3月末にはまだダンコウバイの花が黄色を残している森にちらほらとミヤマウグイスカグラの赤が見えるようになってくる。足元を見ながら歩いているが、草花の姿はない。麓にはオオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ、ホトケノザ、ミチタネツケバナ、ハコベなど色とりどりに絨毯のように広がっているのだが。山道にはシュンランだけが緑濃い葉に隠れるように蕾を膨らませている。そうそうフキノトウが明るい緑色に咲き出している。これは春の味覚、見つけると摘んで夕食のお供にする。

photo3雲に覆われた山頂:地附山
雲に覆われた山頂 3.28

photo4森の中はまだ冬の趣:地附山
森の中はまだ冬の趣 3.30

photo5春の味覚フキノトウ:地附山
春の味覚フキノトウ 3.31

粘菌を探しながら藪の中に踏み込んでみるが、この季節は粘菌もまだ眠っているようだ。

photo6物見岩から登る:地附山
物見岩から登る 3.31

photo7春の気配は梢に
春の気配は梢に 3.31

photo8地附山山頂から飯縄山
地附山山頂から飯縄山 4.5

地附山にはいくつかの登山コースがあるから、それぞれのコースを歩いてみるが、3月の山はまだ眠りから覚めていない様子。見上げれば木々の梢に花穂が膨らんで次第に下垂してくるのだが、高い梢にあって枝に隠れているのでつい見過ごしてしまう。足元に落ちているのを見つけると梢を仰ぎ見てそれと知る。

4月になると地附山メモリアル公園が開園する。休日には子供の声が賑やかになって山も動き出すような気がする。地附山登山コースはいくつもあるがどこを歩いてもスミレがたくさん咲き出している。蕾のまま気を引いていたシュンランもいよいよ花開く。

スミレが咲き出した

photo2タチツボスミレ
タチツボスミレ 4.5

photoアカウフタチツボスミレ
アカフタチツボスミレ 4.7

photoノジスミレ
ノジスミレ 4.5

photo2オトメタチツボスミレ
オトメタチツボスミレ 4.5

シュンラン

photoシュンラン
蕾 3.28

photoシュンラン
開花 4.5

photoシュンラン
一株に10個の花 4.7

photoシュンラン
食害を受けなかった個体 4.7

足元に花が開いてくると嬉しくなり、時間を見つけては山へ向かう。森の中にシュンランを探し、ショウジョウバカマはまだかと落ち葉の下をのぞき、センボンヤリの花芽を探す。サジガンクビソウの芽が柔らかそうな若緑を広げている。

そしてそろそろ粘菌も動き出すのではないかと、時には藪の中に踏み込んだり、重なっている倒木の影をのぞき込んだりしながら歩く。だが、長野の4月初旬はまだまだ気温も低くなるからか、昨年活動した跡ばかり。動き始めた様子は見つけられない。

photo11粘菌が活動した跡
粘菌が活動した跡 4.4

目を上げればツノハシバミの雄花がずいぶん長くなって風に揺れている。行くたびに見上げていると、ある日赤い火花が弾けるように雌花が開く。小さな小さな炎。寒かった森に暖を灯すようだ。

photo12ツノハシバミ雄花が下垂し雌花が開花
ツノハシバミ雄花が下垂し雌花が開花

度々登っていると、山がゆっくり動き出しているような気配を感じることができる。日差しの暖かい日は待ちかねていたように蝶が舞う。ヒオドシチョウやルリタテハの色が綺麗だ。この姿でどうやって冬を越してきたのだろうと思うけれど、無事に春を迎えて日向ぼっこをしているような姿に会うと嬉しくなる。よく見ると羽の先がボロボロになっていることもあって、厳しい冬を乗り越えてきたんだねと声をかけたくなる。

photo13飯縄山,ルリタテハ:地附山
雲の動きが速い 4.7

日増しに暖かくなるから、期待を込めて木のウロや重なった木の下などを見て歩く。粘菌を探すのだ。粘菌はなかなか動き出さないが、時々キノコの赤ちゃんを見つける。本当に大きくなってキノコになるのだろうかと思うほどの可愛い芽吹きもある。目に見えないような世界はきっと面白いだろうなぁと思うのはこういうところをのぞく時。何かが動いている、点のような小さな虫だろうか。アカマツのヤニらしい艶やかな表面には黄色や青、半透明の膜のようなものが広がっている。これが次の日に見ると変化している。君は一体何?などと話しかけながら目を近づけてのぞき込んでいる私の姿を見たら、おかしな人と、遠回りされそうだ。

キノコかな 4.7

photo白く丸い傘

photo白く丸い傘

photo白く丸い傘

photo白く丸い傘

同じ山でもその日の天気によって見える風景は違うし、植物は日々変化していく。もちろん動物や昆虫はいつも同じ場所にいるわけではない。雲が濃い日は獲物が見えにくいのか、トビが電柱の上に止まってピーヨローと鳴いていた。カメラを向けた瞬間飛び立ってしまったので、ピンボケの飛び立つトビの写真になった。

飛び立つトビ 4.7
photo白い丸い傘

雨が多いけれど、晴れれば気温も上がってくるので、そろそろショウジョウバカマも咲き出すのではないか。長野に引っ越してきた時は森の中に続くピンクの点描に大喜びしたものだが、森が荒れるにつれてずいぶん減ってしまったように思う。ゆっくり六号古墳のあたりに行くと咲いている。落ち葉を持ち上げるようにして咲いている数輪のショウジョウバカマを見つけた。ショウジョウバカマを見つけたので、今日の目的は達成とばかりに倒木の多い森をうろうろ、粘菌はやはりまだみたいだ。少し前からぽっちりと膨らみ始めたミヤマガマズミの花芽がバンザイをするように小さな葉を伸ばして枝先に立っている。可愛いねと声をかけながら道を進む。山頂はすぐだ。こぼれたドングリがいつの間にか根を伸ばして地面にくっついている。その生命力にも感動だ。

ショウジョウバカマ
photo16ショウジョウバカマ

ミヤマガマズミ花芽

photo17ミヤマガマズミ花芽
4.5

photoミヤマガマズミ花芽
4.5

photoミヤマガマズミ花芽
4.5

photoミヤマガマズミ花芽
4.12

photo根を下ろしたドングリ
根を下ろしたドングリ 4.12

春の勢いに乗るように、その変化を追いかけて地附山を歩く。咲き始めたと思ったら森は花畑になっている。山の春一番に咲くオクチョウジザクラは柔らかな花びらを広げ、黄色いキブシは空からいくつもぶら下がっている。オオバクロモジも気がつけば小さな黄色い花を広げ、爽やかなアロマの恵みをいただく。私の嗅覚は野生を失っているから近づいたくらいでは感じないけれど、鼻を寄せれば爽やかな香気を感じ取ることができる。

photo草も木も花咲く
草も木も花咲く 4.17

山の中の花に見惚れて帰る時は麓に広がる小さな草花にも目が優しくなっている。ハコベの白、カキドオシの薄紫、ヒメオドリコソウの淡いピンクなどにしばらく足を止める。

photo20一面に咲くミドリハコベ
一面に咲くミドリハコベ 4.17

photo21駒弓神社の桜
駒弓神社の桜 4.18

街の桜が満開になり、ふと気がつくと桜吹雪の後に小さな葉が開いている。地附山公園にも、駒弓神社登山口にもソメイヨシノが白い世界を広げるが、街の中よりわずかに遅れて目を楽しませてくれる。そして何回登っても山頂から見る飯縄山が同じということはない。春霞の中に朧に浮かぶ日もあれば、流れる雲に遊ばれるようにくっきり影を落としている日もある。毎日登山というわけにはいかないが、日々登るたびにその変化を写してくるのも面白い。

photo22芽吹きの季節
芽吹きの季節 4.18

4月も半ばを過ぎて、森の木々が花開き始めるのを待っていたように粘菌も少し動きが始まったようだ。夫が「ネンキン(粘菌)生活の始まりだ」などと冗談を言いながら、接写用の重いカメラを持って足繁く裏山へ向かう日も近そうだ。

photo23粘菌ヌカホコリの仲間
粘菌ヌカホコリの仲間 4.18

これからは忙しい。イカリソウ、ギンラン、チゴユリにベニバナイチヤクソウ、ウメガサソウやクモキリソウ、ウツボグサ・・・数えることに意味はないけれど、つい指折りながら今年の花に会う楽しみを胸に膨らませている。

木々の花も賑やかに 4.18

photoモミジイチゴ
モミジイチゴ

photoオクチョウジザクラ
オクチョウジザクラ

photoウリカエデ
ウリカエデ

photoキブシ
キブシ




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