大峰山と言えば春一番に咲くミスミソウ、そしてトキワイカリソウとイカリソウ。その花を見に登る。初めて歌が丘から降りたときは道々花開くシュンランが溢れるように続いていて感激した。だが、今そのシュンランはなかなか見ることができない。どうしたのだろう。夫は「盗掘の山」とつぶやく。山頂のミスミソウが掘られてしまった跡を見つけたこともある。車で山頂肩まで登れるからやましいことを考える人が入りやすいのだろうか。山頂に蝶の博物館として建てられたというお城のような建物も閉館してからしばらく経ち、建材の盗難にあったという。夫の呟きもなまじ間違いではないところが悲しい。
お隣の地附山は愛護会が活動しているからいつも丁寧に見回りされている。大峰山は松茸山だそうだから地主さんが守ってきた山なのだろうか。今松枯れが酷くなってますます山は荒れているように見える。
それでも春だけでなく季節ごとの楽しみがあり、家から山靴を履いて歩いていくことができる数少ない山として楽しんでいる。今年もミスミソウを見、次はイカリソウだねと話していた。
4月に入って何回か登ってみたが、イカリソウの花芽は見つけられなかった。4月も後半だからそろそろかなと話していたら、夫が朝散歩に出かけて、麓に咲くイカリソウを見たという。それではと、早速二人で出かけた。朝から雲がうっすらと広がりあまり良いお天気ではないようだが、「夕方までは大丈夫」とはわが家のお天気予報士、夫のセリフ。カバンに傘だけ入れて出発。
夫が朝散歩で見つけたイカリソウ群生地はそろそろ花の終わりに差し掛かっていたが、花の赤が綺麗だ。例年より株が小さいような気がする。花がついていない葉だけの株が多い。もちろん私たちはしゃがんで撮影。あれ、なんだかポツリと当たった?
雨粒かなと言うほどには当たらないが・・・。しばらく撮影しているうちにポツリは無くなったようなので、行けるところまで行ってみようと登り始める。
物見岩からの風景も今日は霞んでいる。一休みして煎餅をかじりながら開いてきたマルバアオダモの白い花やコナラの黄緑の花を眺める。
山頂方面の空を見るとうっすらと青い、大丈夫みたいだね。再び登り出す。数日暖かい日が続いたからか、山道は乾き切っている様子。地附山への分岐を過ぎて大峰山へ向かう。先日地附山近くにクマが出たというので公園が閉鎖され、ハイキングコースにも注意が呼びかけられている。クマがいつまでも同じところにいるとも思えないけれど、わざわざ入っていくことにはちょっと躊躇する。
分岐を過ぎて小さな沢の源流を過ぎると急な登りが始まる。ミヤマホウソ、ミツバツツジなどの花はまだ蕾だ。オオバクロモジが透き通るような花を開いている。オクチョウジザクラやミヤマウグイスカグラはほとんど散ってしまっている。足元に小さなセンボンヤリを探しながら登る。あまり見つからない。踏まれそうなところに咲いているのはタチツボスミレばかり。
山頂に近くなるとオオイワカガミの葉が光っている。まだ早いかな、小さな蕾を見つけた。エンレイソウの花を見て喜びながら少し行くと山頂。純白のトキワイカリソウが満開だ。見事に広がっているトキワイカリソウの純白に疲れも忘れる。
10日前に来た時はまだ硬い蕾だったが、今日は見事にたくさんの純白のイカリをぶら下げている。 さて、今日は大峰山登頂100回だ、記念撮影をしよう。夫が持ってきてくれた100回と書いた紙を持ってパチリ。神戸文化の毎日登山と言うほどにはいかないが、同じ山に繰り返し登ることで見えてくるものもある。
初めて大峰山に登ったのは2013年5月18日とメモにある。長野に引っ越してきて10日ほど経った頃。爽やかな5月の里山に登って都会の喧騒から離れてきたことを実感した。
山頂で煎餅をかじりながら休憩していたが、だんだん雲が厚くなってきた様子、そろそろ帰ろうか。帰りは真っ直ぐ降る歌ヶ丘へのコースにしよう。山から降りて家に帰る途中オケラとイタドリを摘んでいく。「山でうまいはオケラにトトキ(ツリガネニンジン)」とよく聞くが、野草はアク抜きなどの処理が難しいのも多いからそれほど熱心に摘まない。一食分を摘んで夕食の楽しみにする。イタドリは1日水につけるから明日のお楽しみだ。2日分の食材をぶら下げてルンルンと家路についた。 雨は夕方からだった。