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古くからの霊山 弥彦山634m(新潟県)

2025年5月14日(木)


用があって新潟に向かった。北陸道を走り、柏崎ICから内陸に向かう。道路の周りはどこまでも広く平だ。植えられたばかりの稲が水の上に顔を出している。小国の山を越えて用を済ませ、今度は新潟方面に向かって関越道を走る。越後平野の端から中心部に向かって走っていく道の周りはどんどん広くなってどこまでも水の張られた水田が続く。

photo1広い水田の向こうに飯豊山
広い水田の向こうに飯豊山

photo2大鳥居をくぐる道
大鳥居をくぐる道

photo3弥彦神社にお参りしてから登山道へ
弥彦神社にお参りしてから登山道へ

翌朝、弥彦神社に向かう。駐車場は空いているが、混雑時を予想させられる、とても広い駐車場だ。駐車場から弥彦神社への道路には鳥居が立っている。鳥居を潜って参拝路をまっすぐ登っていくと弥彦神社に突き当たる。行ってきますと挨拶してから横にそれ万葉の道に入る。弥彦山はこの神社の御神体。

歩き始めると、大きな杉がどこまでも続く森にウワバミソウが見えなくなるまで続いている。蕾が膨らんで小さな白い花が開き始めた姿は濃い緑に白い金平糖を散らしたようで可愛い。

万葉の道を登っていく間にも花を見つけるとしゃがみ込んで撮影するから時間がかかる。ロープウェイ乗り場への道を分けるといよいよ登山らしい道になる。シャガが盛りだ。道は急に険しくなり、息があがる。湿った道は丁寧に整備されているので歩きやすいが、階段上に整備されたところは急な段が続くのでどっこいしょと言いたくなる。

photo4ずっとどこまでもウワバミソウ
ずっとどこまでもウワバミソウ

photo5シャガの群生
シャガの群生

下から見上げた時に随分急な斜面に見えると思ったが、実際歩いてみると思ったとおりのなかなか厳しい道だ。だが、たくさんの人が登っている。私たちはひたすら追い越されながらゆっくり登っていく。

足元に広がるミヤマカタバミやイカリソウの葉を見つけるたびに喜んでそっと葉を分けてみるが、イカリソウの花は終わって花柄の先にまだ細い実があるばかり。ミヤマカタバミは根元をそっと分けて探しても花柄の痕跡すら見つけられない。ようやく実をみつけたのはかなり登ってからだった。

実をつけ始めた春の花

photoエンレイソウ若い実
エンレイソウ若い実

photoホウチャクソウ若い実
ホウチャクソウ若い実

photoミヤマカタバミ実
ミヤマカタバミ実

photoオウレン実
オウレン実

どっこいしょと言ったり、咲き残ったスミレを見つけて喜んだりしながら登っていくと新しい合目石が立っていた。「一合目」とある。ずいぶん登ったつもりなのに、まだ一合目とは。

photo7まだ新しい合目石
まだ新しい合目石

少しがっかりしながらも木々の新芽を見上げたり、足元の花を見たりしているうちに少しずつ標高を上げて行く。当たり前だが、下では全て散ってしまっていたムラサキヤシオの花が登るにつれまだ咲いている。

photo8ムラサキヤシオ
ムラサキヤシオ

photo9沢沿いの岩を登る
沢沿いの岩を登る

沢沿いの道はかなり湿っているが、周辺にはサワハコベの白が広く散らばっている。斜面にはオウレンの濃い緑の葉が広がっている。まだ若い実が円形になって可愛らしい。セリバオウレンかと思っていたが、この地域にはキクバオウレンもあり、パッと見ただけでは分からない。混生しているそうだから、オウレンとしておこう。

photo10サワハコベ群落
サワハコベ群落

草むらの中に咲く

photoタチシオデ
タチシオデ

photoオオケタネツケバナ
オオケタネツケバナ

photoヤブニンジン
ヤブニンジン

photoルイヨウボタン
ルイヨウボタン

急な岩の斜面をトラバースするような道を越えて沢を渡ると南斜面に出た。オオイワカガミの葉が道の脇一面に続いている。今日は薄日だけれど、日の光を受けてツヤツヤ光っている。花が終わって実をつけている花穂を見ながら歩いていると何本かまだ花を残しているものがあった。嬉しくなって写真を撮る。近くにタチシオデも咲き、フデリンドウもポツリと見えた。

photo12ガクウラジロヨウラク
ガクウラジロヨウラク

つい足元ばかり見ているが、ふと目を上げればピンクの小さな壺型の花がぶら下がっている。これはガクウラジロヨウラクだ。日本海側に咲くという。

少しずつ見えていたユキザサが増え、あちらこちらに黄色い花がくっきりと開いて美しい。近づいてみると花弁の中心部にオレンジ色が見える。この花はエチゴキジムシロだ。標高が上がるにつれ葉の影に隠れるようにトキワイカリソウの花も見え出した。すでに萎れて縮んだものの中にまだ純白のイカリを伸ばした花が揺れているのを見つけると嬉しくなる。近くにはラショウモンカズラの濃い紫の花も綻び始めている。

photo13エチゴキジムシロ
エチゴキジムシロ

ブナの新緑と森の花

photo15ヒメアオキの花咲く道を行く,雄花,雌花
ヒメアオキの花咲く道を行く

まだ咲いていた

photoオオタチツボスミレ
オオタチツボスミレ

photoオオイワカガミ
オオイワカガミ

photoナガハシスミレ
ナガハシスミレ

photoツボスミレ
ツボスミレ

一合目から一つ一つ合目石を見て登ってきたが、ようやく九合目、稜線だ。ツボスミレが群落になって迎えてくれた。目の前には日本海が見下ろせ、佐渡島がゆったりと浮かんでいる。昨日は見事な青空だったが、今日はあいにくの霞がかった空。それでもすぐ近くに佐渡の山が見えるのは嬉しい。

photo17九合目から遠くに佐渡島
九合目から遠くに佐渡島

ここから右に少しだけ降るとロープウェイ山頂駅がある。私たちは左に進み、山頂を目指す。すぐそこかと思っていたら、なんのなんのなかなか急な階段がずっと上の方まで続いている。疲れた足にエイヤッと活力を入れながら登っていく。

季節には花の道になりそうな紫陽花の葉に声援を送られて歩いて行くと、綺麗なブルーの星が落ちている、フデリンドウだ。あっちにもこっちにもくっきりと開いた花が見事だ。ようやく山頂の弥彦神社が見えると、今度は陸側に視界が開け今朝出てきた三条市や燕市の方まで広い平野が続いている。遠くに見える白い山並みは飯豊連峰だろう。

ゆったりと広い田園風景を眺め下ろす。目の前の立木にはアケビの花が満開。頭上のウワミズザクラはまだ蕾。さすがに山頂は少しだけ季節が遅いようだ。

ゆっくり石段を登って山頂の神社にお参りする。山頂神社の周りは、ぐるりと展望できる広がりになっている。お参りしてからぐるりと一回りする。

photo18弥彦山山頂の神社
弥彦山山頂の神社

photo19弥彦山山頂の展望台
弥彦山山頂の展望台

ずっと昔息子が小さい時に弟が連れてきてくれたことがある。当時の写真はほとんど無くなったが、1枚だけ空間に迫り出すような展望台らしきところに立っている写真がある。どこで撮ったのかと思っていたが、ここに立って見て「あぁここか」と分かった。

photo弥彦山の山頂で
弥彦山の山頂で 2005.7.24

photo21懐かしい弥彦山山頂の石
懐かしい弥彦山山頂の石

新潟県で生まれ育った私は何回か弥彦山にも登ったことがあるはずだが、小さい頃のことはあまり覚えていない。夫とも一回登ったことがあるが、数えてみるとすでに20年も経っている。夏の休暇を利用して鳥海山へ登り、その帰り道に立ち寄った。ロープウェイで登ったことは覚えていたが、山頂まで登ったかどうか、二人とも忘れていた。古い写真を見ると、山頂の大きな石のところで撮った写真が残っている。夫は長い運転で疲れていたので、ロープウェイ発車まで横になって休んだようだ。そして弥彦山を降りてからまた関東の自宅まで長い運転が待っていた。若かったんだねと思わず呟く。

photo22標高638mだった?
標高638mだった? 2005.7.24

昔の写真を見ると標高638mと書いてある。現在の標高は634m、「ムサシだよ」と言うと「スカイツリーだ」と返ってくる。弥彦山の標高はそれほど高くはないけれど、海岸線から一気に登るからほぼ標高通りの高低差になる。ちなみに駐車場の標高は30メートル前後らしいから約600mを登ったことになる。

さて長野まで帰らなくてはいけない。下りはロープウェイに乗ろう。懐かしい小型のゴンドラに乗って一気に降る。

photo23弥彦山ロープウェイ
弥彦山ロープウェイ 2005.7.24

photo24下りはロープウェイで
下りはロープウェイで

弥彦神社は古く万葉集にも登場するそうで、「おやひこさん」と親しまれてきた。

境内にある「重軽の石」は願い事が叶うか教えてくれるそうだが、そっと撫でて帰ってきた。願い事は叶うも叶わないも自分の心の中でひっそりと持ち続けるもの・・・と呟きながら。




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