⬆︎Top 

568
ミツガシワ咲く沼の原湿原 870m(新潟県、長野県)

2025年6月5日(木)


「わぁ〜、あの白い色はみんなミツガシワ?」思わず大きな声を出してしまった。幸い広々とした沼の原湿原に人影は見えない。

photo1ミツガシワ群落
ミツガシワ群落

久しぶりの晴天、真っ青な空に惹かれて長野県と新潟県の県境に広がる斑尾高原にやってきた。先日神奈川から来た友人と一緒に袴岳に登り、二人で「ワニ、ワニ」と口ずさむように呟きながら歩いた。探していたのはワニグチソウ。結局見つけられないまま友人は帰った。その後も私が「ワニはいないかな」などと言っているものだから、呆れた夫が「どこにいるの?行ってみよう」と、ここ沼の原湿原を目指した。我が家から日帰りでゆっくり行って来ることができるところでのワニグチソウの情報はここだけだったから。

沼の原湿原には何度も訪れているが、今までは中央の湿原から万坂峠方面、赤池方面、希望湖から毛無山方面を歩いていた。南に伸びる道もあり、ペンション街や斑尾高原スキー場のゲレンデあたりに行く道もあることは知っていたが、歩いたことはなかった。

photo2ヤチダモの新緑
ヤチダモの新緑

photo3これはネマガリダケの花かなぁ
これはネマガリダケの花かなぁ

ずっと前に八坊塚トレイルから入って沼の原湿原東トレイルに行こうとしたことがあったが、その時は森の中で時間切れになり、途中で引き返してきた。

今回は沼の原湿原の駐車場に車を置いて、湿原東トレイルに行ってみよう。まっすぐ伸びたヤチダモの新緑が綺麗だ。道沿いに広がる笹竹には花が咲いている。この辺り咲いているのはクマイザサか、ネマガリダケか、正確にはわからない。

photo4気持ち良い沢沿いの道
気持ち良い沢沿いの道

沢沿いの道を歩き始めると空気が爽やかだ。深い森の足元にはチゴユリ、ホウチャクソウが咲いている。もちろん私は「ワニはいないかな」と呟きながら歩いている。オオタチツボスミレとツボスミレがまだ咲き広がっている。ナガハシスミレが終わりかけた花をポツリとつけている。道は上りだが、深い木々の中なので気持ち良い。ゆっくり登って行く。

道沿いに咲く花

photoチゴユリ
チゴユリ

photoホウチャクソウ
ホウチャクソウ

photoナガハシスミレ
ナガハシスミレ

photoツボスミレ
ツボスミレ

そして、いきなり目の前に広い緑の空間が開いた。どこまでも続くのは水芭蕉の大きくなった葉。なんと広い湿原だ。森の中に沈むように。これは緑の海というのか。湿原の中に一本の木道が続いている。

photo6どこまでも水芭蕉
どこまでも水芭蕉

photo7森の奥に広がる湿原
森の奥に広がる湿原

ところどころにミツガシワとサワオグルマが咲いている。一つ越えるとまた湿原が広がり、私たちは大喜び。そして喜びながら歩くうちに、道は沢沿いに細くなった。沢を越える木橋が大きく傾き、危険だから注意して渡るようにと看板が立っているところは「危ないからここはやめよう」と、通り過ぎてさらに進む。

しばらく行くと、せせらぎトレイルと湿原東トレイルの分岐らしいところに到着、八坊塚トレイルに続く道を行こう。途中道は杉林の中になり、ウスバサイシンが咲いていた。タチシオデの花があちらこちらに揺れている。沢を見下ろしながらかなり登ったがちょっと休憩。煎餅を食べて塩分も補給しよう。

深い森の中で

photoウスバサイシン
ウスバサイシン

photoジンヨウイチヤクソウ蕾
ジンヨウイチヤクソウ蕾

photoセンボンヤリ
センボンヤリ

photoタチシオデ
タチシオデ

沢の向こうに見えるオオカメノキはもうずいぶん花が散っている。しばらく登ると道は緩やかになり周囲には白根葵の葉が見られるようになった。森の奥までチゴユリ、ホウチャクソウが続いている。ツクバネソウも多い。だが、私が会いたいと思っているワニグチソウは見られない。でもここで、小さな粘菌マメホコリを発見したので、夫は大喜び。深い森の中でも粘菌が活躍を始めたようだ。

photo9深い森の中に道が続く
深い森の中に道が続く

photo10まだ小さい粘菌マメホコリ
まだ小さい粘菌マメホコリ

さらに続く道は上りが急になってきた。また分岐があったが、今日はここまでにしようと、来た道を戻ることにした。戻る途中でギフチョウに迎えられた。ギフチョウはひらりひらりと舞いながら、私たちの前へ行っては止まり、また少し進んでは止まって、しばらく道連れになっていた。

photo11ギフチョウ,サカハチチョウ
ギフチョウ サカハチチョウ

分岐まで戻り、今度はせせらぎトレイルを進む。このトレイルはぐるりとまわって沼の原湿原の中央部に戻る。

photo12ウワミズザクラ
咲き出したウワミズザクラ

photo13ユキツバキ
花糸(雄しべ)が黄色いユキツバキ

思ったより長い道を歩いてようやくいつもの湿原に出た。そして思わず「わぁ〜ミツガシワ」と大きな声を出してしまった。ちょうどミツガシワの最盛期だ。

photo14沼の原湿原の入り口に戻った
沼の原湿原の入り口に戻った

photo16一面のミツガシワ
一面のミツガシワ

ミツガシワを横目にまず湿原の淵を歩いてみよう。足元にはミツバツチグリの黄色が広がっている。キンポウゲも咲いている。そして小さな白い花が水辺を飾るように咲いている。森の中で見た花もあるが、ミミナグサやノミノフスマのような、近づいてみないと花の形がわからないような小さな花も満開だ。

小さな花も可愛い

photoミツバツチグリ
ミツバツチグリ

photoキンポウゲ
キンポウゲ

photoミミナグサ
ミミナグサ

photoノミノフスマ
ノミノフスマ

一つ一つ花を見ながら歩くからなかなか進まないが、さほど行かないうちに「あ、ワニ!」。とうとう会えた。だが、まだ花は小さな蕾状態。咲くのはずいぶん先になりそうだ。

ナルコユリやアマドコロに似た姿ですっくと立っている。茎の先から花柄が伸びて、その先に2枚の苞が下向きに開いている。そっと覗き込むと2枚の苞の中に小さな蕾が2個並んでいる。開くまでどのくらい時間が必要なのだろう。ぜひ開花した様子を見に来たいねと話しながらその場を後にした。

ワニグチソウはまだ蕾

photoワニグチソウ蕾

photoワニグチソウ蕾

photoワニグチソウ蕾

photoワニグチソウ蕾

photo18ワニグチソウ苞の内側
ワニグチソウ苞の内側

photo21沼の原湿原
沼の原湿原

東京の高尾山にはワニグチソウとミヤマナルコユリの交雑種らしいタカオワニグチソウが咲くそうだ。今日も森の中にたくさんのミヤマナルコユリの蕾が見られたけれど、このあたりには交雑種はないのかな。

さぁそろそろお腹も空いてきた。湿原を一巡りして帰ろう。湿原を白く染めるミツガシワを楽しみながら歩き出す。黄色い点はサワオグルマ、紫の広がりはカキツバタだ。緑の中に続く木道をゆっくり歩く。せせらぎトレイルでは誰一人会わなかったが、ここでは遠くにポツリと人の姿も見える。

ミツガシワ

photoミツガシワ

photoミツガシワ

photoミツガシワ

photoミツガシワ

photo19サワオグルマ(黄)  カキツバタ(紫)
サワオグルマ(黄) カキツバタ(紫)

木道を歩いて行くと、水辺には小さなマイヅルソウも咲き出している。テンナンショウも見える。葉が一枚だからヒトツバかと思うが、これはヒロハテンナンショウ。日本海側に咲くそうだ。ヒトツバの小葉は鳥足状に分裂するというが、まだ実際に見たことはない。

花が好きと言って眺めて喜んでいた頃はみんな同じ花に見えていたのに、近づいて行くにつれてそれぞれの顔がよく見えるようになってきたということだろうか。オオバタネツケバナとオオケタネツケバナの違いも分かりにくい。日本海側に多いというオオケタネツケバナだが、フサフサ毛が生えていれば一目瞭然となるのだが、そうは行かない。小さな毛はちょっと見てもわからないくらいだ。小葉の先端の一枚が大きく、側小片に鋸歯があるのを見て「あ、これはオオケタネツケバナ」と思うことにしている。似ていても側小片に鋸歯がないものはオオバタネツケバナらしい。

湿原周辺に咲いていた

photo4ヒロハテンナンショウ
ヒロハテンナンショウ

photoマイヅルソウ
マイヅルソウ

photoリュウキンカ
リュウキンカ

photoオオケタネツケバナ
オオケタネツケバナ

植物学者のように細かく分類されたものが全てわからなくても良いと思っているが、近くの里山などで頻繁に見ることができる花くらいは分かるようになりたいとも思う。

湿原をぐるっと回って、ズミの花がきれいな水辺から駐車場に戻る。水辺にケナシヤブデマリの花が咲き出してきた。真っ白く大きな装飾花が小さな花を取り囲んでいるが、5個に分かれたうちの一つがとても小さくて、蝶のように見えるのが特徴だ。

photo23青空に映えるズミ
青空に映えるズミ

photo24ケナシヤブデマリ
ケナシヤブデマリ

帰り道はタニウツギのピンクに囲まれながら走り、「まだらおの湯」で遅い昼食を食べてから家に向かった。




  • Gold-ArtBox Home