日曜日だから山歩きの人も多いだろうと、久しぶりに大峰山に向かった。夫は用があるので、今日は一人だ。家から歩き出して、まず霊山寺に向かう。里山と民家の境目あたりの森には小鳥の声がたくさん聞こえる。最近はクマもやってくるようだから、熊鈴をつけて歩いている。
霊山寺から物見岩への山道に入っていく。山は静かだ。リーンリーンと自分の歩くリズムで鈴が鳴る。花の季節には立ったりしゃがんだり忙しいが、この季節はただただゆっくり歩いていく。時々木の芽を撮ったり、わずかに残った実を撮ったりするが、木の実はだんだん少なくなってきた。倒木が積み重ねてあるところでは歩みを止めて粘菌を探すが、マメホコリがポツリ。あとは枯れたようなキノコが張り付いているばかり。
下ばかり見て歩くのもつまらないと、見あげればソヨゴの実が日を受けて光っている。ソヨゴ(冬青)は和名の通り、冬も緑が光っていて嬉しい木だ。このコースには比較的多い。
地附山との分岐を過ぎるとジグザグに登っていく。頭上にはヤマナシの実がたくさん見えるが、落ちていないかと思って探してもなかなか見つからない。
落ち葉が積もっているから、隠れた石や木の根に気をつけて歩く。オクモミジハグマの実が綿毛を光らせている。山頂近くになるとアキノギンリョウソウも壺を掲げている。この実は本当に壺のようで可愛い。初夏に咲くギンリョウソウと同じで、葉緑素を持たない。半透明の姿でスクッと立っているのを見つけると嬉しくなる花だ。
山頂で定点撮影をして、今日は同じ道を引き返す。分岐から地附山に向かう。スキー場跡を通って地附山山頂に到着。山頂には誰もいない。大峰山の降りで聞こえていた「ヤッホー」の主たちはみんな降りてしまったのだろうか。男女の声がにぎやかに聞こえていたのだが。そういえば、分岐をすぎて大峰山へ登り始めてから地附山まで誰にも会っていない。遠くのヤッホーが聞こえただけだ。さて、長居は無用。帰ろうか。駒弓神社まで降りたら、神社の境内を掃除している人がいて、ようやく人に会った。
とうとう師走になった。だが、意外に暖かい。青空も綺麗だ。これは山日和。夫も行く気満々、車を駒弓神社の駐車場に停める。車は我が家の一台だけ。熊注意の看板を取り付けている人が「一昨日の夕方そこで目撃されたから、気をつけてね」と言う。いつまでも同じところにはいないと思うし、日中は大丈夫だろう。熊鈴を確認して歩き出す。
今日は前日の逆コースで大峰山に行こうと話してきた。まずいつもの道を地附山へ。あっという間に木々は葉を落とし、見通しが良くなった。途中で写真を撮る回数が減っているので、快調に進む。いかに写真撮影に時間がかかっているか分かるねと話しながら山頂へ。青空が綺麗だが、静かだ。飯縄山から黒姫山、妙高山、そしてずっと東に目をやると斑尾山も見える。しばらく山を眺めてから先へ進む。
スキー場跡が見えるところで前方に人の気配。木々の間に赤い服の色が見えるが先へ降りて行ったようだ。小さなマツムシソウが地面スレスレに咲いている。最後の花だろうか。見あげれば木の実も日を受けて光っているので、しばらく藪の中へ入って撮影する。
実をつけて枯れている草花を見ながら登って山頂に着くと、先に着いた二人連れが振り返った。あら、先日も地附山で会ったご夫婦。こんなにすぐまた会えるとは・・・、つい話が弾む。好きなものが似ているからと言いながら話が長引いてしまう。しばらく話した後、二人は降りていく。今日は地附山の山頂でお昼を食べるそうだ。
さて、私たちはどうしよう。歌が丘に降るもよし、地附山に戻るもよし。無計画の計画と言いながら、車を置いてきた駐車場へのルートも考え、物見岩から雲上殿へのコースに向かった。
このコースは夏の間は藪になるのであまり歩かない。だが、ヤマコウバシが近いし、オヤマボクチが咲いているのでもっと歩いてみたいところだ。
先に降った二人に地附山分岐のところで追いつき、また会いましょうと挨拶して私たちは物見岩方面に向かった。途中ネズミサシの倒木をくぐり、物見岩につく間、倒木が積み重なっているところを見て歩くが今年は粘菌が少ないようだ。前日は私一人だったが今日は二人、四つの目で見て歩くがやはり見つからない。マメホコリがポコポコと顔を出しているばかり。
落ち葉の積もる道でオヤマボクチの大きな葉を見つけた。今年は花に会えなかったけれど、今度は花の季節にも来ようと話しながら車に向かった。