朝ゆっくり長野を出て、昼に逗子到着。新幹線はありがたい。駅に迎えにきてくれた友人の車で南郷上ノ山公園に向かう。そこに車を停めて、今日は三浦半島の山歩きだ。長野の冬山は雪を待つばかりで花はなくなったが、ここ三浦半島にはまだ花が咲いている。
以前夫も一緒に来た時は逗子駅近くの友人の家から桜山、葉山ステーションを越えて歩いてきたが、今日は午後からなので、短縮ルートだ。
公園の広場を右に見て山道を登り始める。しばらく登ると大きな桜の木がある広場に出る。春にはニオイタチツボスミレを含むスミレが群落になって広がっていたが、今はさすがにスミレの花はない。木の実が日を受けて光っている。
さらに進むとヤブランの実が黒く光っている。そして、見たかった花。キチジョウソウ。一見ただの葉の茂りに見えるところだが、そっと葉を分けると咲いている。白と赤紫が隣り合ったような花。道端の茂りを覗き込みながら進むと、まだ蕾もあり、そしてさらに探すと赤い実も見える。私は大喜びでわぁ〜、綺麗、などとはしゃいでしまう。
ここは友人が見つけておいてくれた場所、感謝感謝だ。キチジョウソウは私が思っていた以上に小柄だった。一見するとヤブランが茂っているように見えるが、葉の影に隠れるように咲いている花は長い雄しべが目立ってかわいい。以前神奈川に住んでいた頃にも見たことはあるのだが、写真もほとんど残っていないし、記憶も朧だ。花穂の下部に両性花があり、上の方は雄花というが、実をつけた穂を見るとかなり上まで実がついているのもある。個性豊かということだろうか。この花が咲くと縁起がいいと言われるのが名前(吉祥草)の由来、何かいいことがあるかなぁ。
キチジョウソウに大満足して緩やかに道を登っていく。道の傍らには白い菊の仲間が綺麗に開いている。公園の案内などにはシロヨメナとあるが、中には花びらがとても細くて違う姿に見えるものもある。キクの仲間は似たものが多いので、なかなか名前を探せない。葉の形も花の形も図鑑に似ているのはシロヨメナと呼んでいいだろうか。だがなかなか頷けないのはキクの仲間としておこう。
友人とあれこれ話しながら歩いていると頭上でガシャガシャと音がする。三浦半島の山にはとてもたくさんいると思われるタイワンリスだ。木に登って実を口に頬張っている。長いフサフサの尾が揺れていてかわいいが、増えすぎて日本リスが困っているとも聞く。
森の中を進むと、グミの花らしい小さな花がぶら下がっている。ほとんどの花はすでに萎んで茶色に変色してしまったが、まだ白いのもかろうじて残っている。私のよく知るナツグミとそっくりだが、いくら暖かいと言えこんな季節に咲くはずはない。調べたら、これはナワシログミらしい。寒グミという別名もあると聞けば頷ける。
日本はとても小さな国だと思うのに、ちょっと離れただけで、植生がかなり違う。海に近いとか標高が高いとか、雪が降るとか降らないとか、何が分かれ目なのか難しいけれど、だから面白いと言えるかもしれない。
今日のもう一つの目的のノササゲを見つけてまたまた大喜び。ちょっと時期が遅かったかもしれない、ほとんど大きく弾けてしまっていたが、素敵な色は残っている。道々眺めてきたイヌビワの実も、真っ赤なシロダモの実もそれぞれ個性豊かだ。シロダモは花の季節に昨年の実が色づき、花と実が同時に見られるそうだが、今はちょっと遅く、花は萎れてきた。
イヌビワは小さなイヌビワコバチという蜂と共生しているそうだ。友人が調べてその不思議な生態を教えてくれたが、実際に見ることはできなかった。今後の楽しみとしておこうか。
そして見たかったナガバジャノヒゲの青い実も見つけた。今年何度か三浦半島を訪れて、花を見つけ、若い実を見つけ、今ようやく色づいた実に会った。青く光る実は、長野で見るジャノヒゲより大きい。
近くには地面からニョキっと顔を出したような真っ赤なウラシマソウの実もある。マツムシソウの仲間の実は同じように赤いとうもろこし風だが、ウラシマソウは地面に近い。あの長〜い花の紐はどうなったんだろう。
さて二子山の山頂はそこだ。展望台に上がってみたが、今日はあまり展望が開けない。山も海も霞んで見えている。そろそろ帰ろうか、今日は友人のお母様も一緒に夕食の団欒が待っている。