朝の冷え込みが厳しくなってきた。遠くの山は白い。だが、スキー場にはまだ足りないのか、近くに見えるスキー場の周りは森の色だ。
12月に入ってから、来春の花の季節に向けて足を鍛えておこうと、毎日できるだけ歩くようにしている。冬に閉じこもってしまうと、一段と出るのが億劫になる。遠くに行かなくても良いから歩いてこようと、裏山に出向く。
地附山には毎日のように登る人が何人もいる。山道で出会ったり、出会わなかったり、知った顔に会えば挨拶するのもちょっと立ち話をするのも楽しい。
7日)寒くなってきて熊も冬眠の季節かと思うのに、まだまだ目撃情報は消えない。裏山の登山口にも時々姿を見せるようだ。熊さんに会いたくはないので早朝を避けて、それでも午前中には降りてくる。散歩とは言っているが何かテーマがなければつまらない。冬になって空気がキリッと閉まってくると見通しが良くなる。山頂から目の前に広がる飯縄山、黒姫山、妙高山の姿を見届けてくることにしようか。
12月に入って何回か降った雪がまだ残っている道を踏み締めて登る。日があたると溶けてぐしゃぐしゃだ。時々梢に積もっていた雪がどっと落ちてくる。晴れているのに吹雪のように雪が舞う。青空の下にドンと聳える山を眺めて帰ってきた。
8日)翌日は少し空気が暖かいので、早めに家を出る。神社の入り口には真新しい「熊出没注意」の看板が立てられている。先日も駐車場のところに立てられた。熊も早く冬眠したいのではないだろうかなどと思うけれど、彼らの生命活動の仔細にまで知識は及ばない。地附山には多くの人が登っているが、みんな日中だけにしようと思っているだろう。熊のニュースがなくてもこの寒さでは日中しか登らないとは思うけれど。神社から登っていくと、所々に緑色の絨毯がある。ハンノキの仲間は緑のまま葉を落とすが、雪が降っていよいよ小さな葉までみんな落としてしまったらしい。見上げると梢にはほとんど葉が残っていない。
この日も、山頂から飯縄山を眺めて帰った。
10日)翌日は午前中から用があったので、山散歩はお休み。一日置いた朝は冷え込んだ。少しくらい時間を遅らせても寒さは変わらないが、気分は違う。午後の用もない日だったのでのんびり歩く。
志賀高原は霞の上に乗っている。目を移すと菅平の右奥に浅間山が見える。白い煙が登っているようだ。このところ浅間山の動きは活発らしい。 山頂で飯縄山に挨拶してから、ぐるりと山頂部を巡る。綺麗な緑のウスタビガの繭が落ち葉と共に落ちている。葉柄にピッタリと密着している繭の柄がすごいけれど、葉と一緒に落ちてしまったね。
森の中にミヤマウメモドキの実がまだ残っている。ミヤマガマズミの実とよく似ているが、こちらの方は実が詰まっている感じがする。調べるとミヤマガマズミは液果、ミヤマウメモドキは核果とあるが、中には「液果(核果)」などという記述もあるから、正確には分からない。また宿題が増えた感じ。
だが見た感じはミヤマガマズミの透明な光り方に液果という言葉がピッタリくる。ミヤマウメモドキの実は透明感がなく、色もちょっとオレンジがかっている。
11日)翌日は雪の予報だったが朝から晴れて快晴の空、雪は夕方かららしい。今日も行ってこようと出発。雪の声を聞くと色々な木の実草の実も役目を果たしてそれぞれ飛んで行ったり、落ちたり、茶枯れて倒れたりしている。
地附山はいくつもコースがあり、その一部にしか見られない植物も結構多い。毎回全部のコースを回らないので、たまには違う道も歩いてみようと楽しめるのは違う花(実)の姿も見られるから。雪に埋もれる前に見届けておかないと、今度は一年後かもしれない。
パワーポイントの展望台から見える善光寺平は朧に霞んでいる。千曲川の流れがあるから霞むのだろうか、空は青く、霞の上に志賀高原の峰々が浮かび上がっている。森や草むらに残る実を見つけながら山頂に上がると北の空は深い青が広がり、雲ひとつない。青空にくっきりと映える飯縄山、黒姫山、妙高山を久しぶりに見る。こんなに晴れているのに今日はあまり人に会わない。夕方からの雪予報で出足が鈍ったのだろうか。見事に晴れているが、風が強くなってきた。冷たい風だ、帰ろうか。
帰りに朝採りのりんごを少し買っていこうと公園に向かったら、小鳥の声が賑やかだ。カラの混群らしいが、動きが早いのでカメラでは追いかけられない。ようやく画面に収まったのは後ろ姿ばかりだが、その可愛い姿につい頬が緩む。