節分も終わって、立春。南の友人たちからは花の便りが届く。長野はまだまだ地面が凍っている。いや、それでも例年に比べて雪が少ない。
先日(2日)用がある夫に登山口まで送ってもらって地附山に登った時は朝早かったせいもあるが、登山道に残った雪がカチカチに凍っていて、今期初めて軽アイゼンを履いた。ザクッザクッと氷を踏み砕く音を聞きながら登り着いた山頂からは飯縄山は見えなかった。新潟、北陸方面は大雪と聞く、北の空を覆う雲が雪を降らしているのだろうか。
地附山にも数十センチの雪が積もる年があるのだが、今年はかなり少ない。少ない雪を楽しんだのだろう、山頂の雪を小さなダルマに作った跡が残っている。北風が冷たいので一気に降ってきたが、山中ではついに誰にも会わなかった。動物たちの足跡だけが森を賑やかにしている。
今日は電車に乗って南の山へ行こうかという夫に、「今日は近くにしよう」と、私が呟く。珍しいことだが、鬼の霍乱というほどでもないけれど、ちょっぴりどこかがだるい。「それでも行くの?」と夫。「歩いた方が元気になると思う」と私。
そうだ、もう2月になったんだ。2月はイケさんの月(イケさんが旅立って2年になる)だ。桝形城跡に行って、イケさんと話してこよう。そうすれば元気も出るだろう。
地附山に残る雪はこの数日でさらに少なくなっていた。残っている雪はちょっと凍っているが、今日は暖かいから溶け始めている。時々滑りながら登っていく。木々の冬芽が少しずつ膨らんできた。ダンコウバイは今にも開きそうだ。まだ茶色の森の変化を見つけながらゆっくり登る。
山頂下でスーさんに出会った。毎日登っているそうだが、新年になってからあまり会わなかった。立ち話をしているとまた別の男性がやってきた。みんなで一緒に山頂へ行く。今日は見事に青空の下に飯縄山が輝いている。黒姫山も妙高山もくっきり見えている。
1月後半に登った時、青空に昼の月が綺麗だと山頂で写真を撮ったが、今日は見えないと夫が呟く。半月近く経っているのだから当たり前だということは分かっているが、その違いを意識するのも面白いらしい。同じところで写真を撮る。
素晴らしい景色を眺めながら山頂でしばらく立ち話。もう一人の男性は大峰山まで行くと言う。「では、私たちは桝形に行くので・・、気をつけて」と挨拶したら、スーさんも桝形へ行こうと言う。スーさんと話しながら3人で桝形城跡に向かう。
雪の上にヌルデの葉が落ちている。茶色く枯れた先端にボコボコと膨らんでいるのは虫瘤。ヌルデシロアブラムシという昆虫が作ったもので、すでに秋の終わりに虫たちは旅立ったらしい。五倍子(ごばいし)と呼ばれたこの虫瘤にはタンニンが多く含まれていて、漢方薬や染料などに使われたという。昔の人の知恵ってすごいなぁと思う。
稜線を歩きながら、ここはイケさんが伐採して切り株を並べたところと心の中で呟く。「粘菌畑を作ってあげたよ」とニヤリと笑う顔が浮かんでくる。 地附山を降りて旧道に向かうと雪の量が増えた。吹き溜まりになるらしい。その雪を踏んで桝形城跡への登りになる。もうどこもかしこもイケさんの思い出に溢れている。雪が残る道をゆっくり登って桝形城跡に到着。
葉を落とした木々の間から、三登山方面が見えている。春から秋にはあまり見えない風景が見えて面白い。山城跡らしい広さの山頂をゆっくり話しながら一回りする。スーさんはキノコに詳しいので、枯れ木に残っているキノコのことなども教えてくれる。大きく斜めに倒れかかった木には上の方までキノコがついている。固まってついているのはムキタケじゃないかと言う。毒キノコのツキヨタケと間違えられることが多いキノコ、何度も確認をしなくてはいけないよとスーさんはその違いを教えてくれる。若い頃は採ってきたキノコをたくさん食べたと笑いながら教えてくれる。
私はアズキナシの実が残っているのを見つけて撮影。赤い実は目立つので見つけやすいが、この季節になると萎んでしまっている。ミヤマガマズミの実も残っているが、シワシワになったり、黒ずんだりしてしまっている。そして枝の先には膨らんだ冬芽が春を待っている。
それほど広くはない山頂だが、あれこれ話しながらゆっくり一回りして、今日はスーさんに山頂写真のシャッターを押してもらった。