ロウバイの開花情報を見ながら、いつ行こうかと楽しみにしていた。埼玉県の西部奥深い秩父山地の入り口あたり、美しい渓谷で有名な長瀞の脇にポコンと立つ宝登山(ほどさん)が目的地。標高はそれほど高くないが、山頂部に広がるロウバイ園を見てみたい。
長野から熊谷まで新幹線で行き、秩父鉄道に乗り換えれば一本で長瀞駅まで行ける。鉄ちゃんの夫は八高線に乗ってみたいと言うが、本数が少ないので難しい。行きは諦め、帰りの時間を調べてみると可能なのが一本あった。長瀞駅を3:52発で寄居駅まで行き、寄居で八高線に乗り換えると高崎で北陸新幹線に乗れる。乗り換え時間が9分というのが少ない気もするが、検索サイトに出てきたから大丈夫だろう。それでも高崎の駅構内の様子が分からないので、新幹線の座席を予約して出発した。
熊谷までは慣れた新幹線「あさま」の旅、だが乗り換えた秩父鉄道は揺れがすごくてびっくり。何度か乗っているのだけれど、多分その度に新鮮に驚いているのだろう。ぐるりとカーブして長瀞駅に到着。
50分弱の揺れる旅にはかなりくたびれたが、咲き乱れるロウバイの森の中に入ることをイメージして気持ちは元気だ。長瀞駅から山に向かってまっすぐ進むと大きな宝登山神社の鳥居が見えてくる。白い鳥居をくぐってさらに進む。宝登山には登山道もあるのだが、乗り鉄で時間を決めた旅なのでロープウェイで花園を目指す。
ロープウェイで山頂駅まで上がるともうお昼だ。調べてきた山頂レストハウスでお昼ご飯を食べてから歩こう。ロウバイはもちろん、坂の上にマンサクの花も満開なのを見て喜びながらレストハウスに向かう。天空むすびセットは5種のおにぎりから2個選ぶと小鉢(これも3種から選ぶ)に、しゃくし菜の漬物と味噌汁付き。二人で1セット頼み、夫はコロッケとコーヒーもつけて満足。私は雲海ショコラ(ホットチョコレート)という飲み物で全身温まる。
しっかり温まったので、さて歩こう。まだ花のないツツジ園をゆっくり登って宝登山神社の奥宮に挨拶する。最後の階段はかなり急登だった。奧宮にはお札所のほかに小さな売店があり、主の老婦人の笑顔がとても素敵で、地元の名産品などを見ながら冗談を言いあう。ここにオリジナル山バッヂがあったのでまだ山頂に行かないのにゲット。
苦笑いしながら蕾の多いロウバイの中の道を登って宝登山山頂に到着。遠くに両神山がうっすらと見えている。ちょっと目をずらせば黄色い花がほんわかと広がっている。山頂近くは標高も高いからか、まだ蕾が多い。一段下がったところに展望台が設けられている。緩やかな斜面に広がる花の波を見下ろせるように椅子も備えてあるが、展望台に大きな漢字の「宝登山」モニュメントが立っていてこれにはびっくりした。戯れに写真を撮ってみたが、見事に逆光、いやそれがいいのかもしれない。
山頂からの眺めを楽しんだ後はゆっくりロウバイの中の散歩道を下る。私がイメージしていたよりかなり狭かったが、黄色い花びらが透けるような花が青い空に映えてなかなか美しい。
私が知っているロウバイは大きく2種類あって、いわゆるロウバイと、ソシンロウバイ。花全体が透き通るような黄色、中には白に近いような淡い色のものもあるが、それは香りの高いソシンロウバイ。全体的に多いようだ。花の中を覗きながら探して歩くとほのかに赤い色のリングを染めた花もあった。こちらはロウバイ。香りはソシンロウバイの方が強いと言われるが、その違いはあまり分からなかった。
ロウバイの花を愛でながら下って行くと梅林の斜面になる。急坂に紅白さまざまな梅の木が続いている。花は咲き始めたところか。一本一本の木に名札がついているのを見ると、長い年月人々に愛されてさまざまな手が加えられてきた花だということが分かる。
私は梅の花の香りが大好きなので、梅林の中を歩くのが好きなのだが、ここはまだ花が少ないせいか、あまり香らないようだ。
ロウバイ園も梅林も、いや、ツツジ園もそうだったが、地面は茶色一色。草の姿も無いのは乾燥のせいなのか、そういう手入れをしているのか。下草の緑がない森は味気ない。梅林の外れまでくると福寿草がポチポチと黄色く光っている。今日は晴れているので太陽に向かって黄色いアンテナを広げている。この花の艶やかな黄色はいつ見ても素晴らしい。
さて、ゆっくり一回りしてきたから帰ろうかと夫。帰る前に、最初に見かけたマンサクの花を近くで見たいと私。もう一度坂道を登る。これは見事だ。木の枝が見えないくらい花盛り。昨年の葉が茶色く残っていて、見事な房になって咲くのはシナマンサク。雪国の山の中で見るマンサクの方がひっそりと咲くので私は好きだが、このシナマンサクの満開ぶりは豪快で、これはまたこれで素晴らしい。満足満足。
さて下りよう。登山道もあるが長瀞渓流にも寄ってみたいので、下りもロープウェイの客になる。ロープウェイの山麓駅から「急坂」とある森の中の道を下って宝登山神社の境内に下り、そこから長瀞駅に向かう。
線路を越して川に向かおうとすると、貨物列車が通っていった。普段あまり見ることがないので、間近に見るのは面白い。
貨物列車を見送ってから商店街を抜け、長瀞の川原に向かう。荒川沿いに岩石が露出している岩畳という天然記念物を見ることができる。地殻変動や、川による侵食でできた岩壁。ライン下りでも知られている。「こたつ舟」という旗が舞っているところを見ると冬でも実施しているようだが、今日はお休みだ。
岩畳はポカポカしていて気持ち良い。何人かの人が岩の上に座ってのんびりしている。私たちもちょっと上がって座る。水面に映る岩をセキレイが横切っていく。風がないので冬とは思えない暖かさだ。しばらくのんびりして、やおら腰を上げる。
調べてきた長瀞発の電車に乗らないと高崎発の新幹線「はくたか」に乗れない。歴史を感じさせられる商店街を抜け、長瀞駅に向かう。ここで気に掛かっていた蕎麦粉鯛焼きを購入。「たぶん」付きの唯一ここだけとある小さなお店だ。小さなお店だが、盛っている。学生のような男性が数人並んでいる後ろに並び、2個購入。
無事時間に間に合うように長瀞駅ホームに入る。帰りは秩父鉄道には3駅だけ。寄居駅で八高線のホームに移る。とても狭いホームだった。しばらく待つと真新しい電車がやってきた。乗り込むと中もピカピカ。座席が区切られていて、大きな囲いのようなものが車内に何箇所かある。これは何?と首を傾げる私の横で夫が喜んでいる。「ハイブリット車だ」。
八高線は揺れなかった。いくつか川を渡り、上信越自動車道をくぐり、高崎までは途中7駅。到着して電車の写真を撮ってから新幹線に向かう。これが誤算、遠かった。最後は走るように新幹線のホームに上がり、間に合った。 新幹線の車中で買ってきた蕎麦粉鯛焼きを食べる。あ、美味しい。もっと買ってくればよかったねと顔を見合わせ、「また買いに行く?」とにやり。